2014年1月21日火曜日

伊福部昭 生誕100年へのメッセージ(2)中川俊郎

伊福部昭生誕100年へのメッセージ 中川俊郎(作曲家・ピアニスト)

中学2年の頃、三善晃先生のレッスン時に、「先生、オーケストレーションを勉強したくなったのですが、何を読んだらいいですか?」と言ったら、即座に「伊福部先生がいい。」とおっしゃられ、書籍名をささっとメモして渡して下さった。三善先生が先生…とお呼びになる程の方なのだ…と驚いたが、そのことは今の私には当時より一層陰影を増して、深く理解できる。

伊福部先生と初めて、そして結果的にこの時一度だけお目にかかったのは、もう30年程前になるか、藍川由美さんの伴奏をした時の打ち上げの席でだった。 「先生のオーケストレーションの本ずっと愛読しています。」「ああ、オーケストレーションの本かぁ(苦笑。だけどまんざらでもない…という感じで)」あわてて、「ヴァイオリン協奏曲素敵でした!」と申し上げたら顔がパッ…と華やがれた。このやりとりが先生とのたった一度の、しかし永遠の宝物である出会いである!

最近でも間接的にお世話になったことがあった。サントリー・伊右衛門の「特茶」(モ ッくん出演!)のCM.のファンファーレ (ドレ|ミーレミファーミファ|ソファミー ドレ|ミーレミファーミレ|ドシラー♪) を作った時に、サンプル曲としてデモDVD.に当たっていたのが、先生の「宇宙大戦争」だった。これはハードル高すぎ!私は顔には出さなかったが、暗澹たる気持ちになった。何回か提出し直し四苦八苦したが、先生のメロディーやハーモニーのパートライティング(ほとんど4度や5度和音)のように強くシンプルで、個性的で魂が解放された境地には、及ぶべくもないが、なんとか私なりにオーダーに近づこうと腐心した覚えがある。

ケージ、カーゲル、クセナキス、ラッヘンマン、武満、湯浅、松平に慣れている私の耳にも、先生の音楽は先鋭的であり続けており、必然である。これは一度どこかで意思表示して起きたかったことである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B7%9D%E4%BF%8A%E9%83%8E